僕は16才の時、実家を出て一人暮らしをしていました。
当時はコンビニも少なく、『お弁当を買う』という概念すらなかったので、自炊は必須だったんです。
インターネットも無い時代、レシピを手に入れる為には本を買うしかありませんでした。
高校生の男子が料理本、なかなか買う勇気がなかったですね。
なので全て独学でした。
ラッキーな事に母親が料理の天才だったので、何となくイメージはできていました。
酒、醤油、砂糖、全て目分量。
何となく鍋に入れて煮込めば、何とかなるだろう。
そう決心し、初めて『煮物』に挑戦しました。
迷宮入り!
鍋に具材を入れ、水を入れて少し煮込みます。
なんとなく『イイ感じ』になってきたら調味ですね。
改めて母親の姿を思い出し、酒、醤油、砂糖、全て目分量。
味見をしてみると、ぜんぜん美味しくない。
ここで困るのが、『どうして美味しくないのか』がまったくわからないんです。
何が多くて、何が少ないのか?
そもそも酒、醤油、砂糖、だけでいいのか?
見当もつかないんです。
とりあえず濃かったので、水を足してみる。
すると、今度は薄い。
『う〜ん、オカン、どうしたらいいんだ?』
電話して聞いてみると、『うまく説明できない』との事。
仕方がないので、とりあえずマズくても食べる事にしました。
すると、ある事に気づきました。
ご飯と一緒に食べると、意外に『イケる』んです。
そうです、僕は『ご飯のおかず』を使っていたんです。
何年かのちに『酒のアテ』を作る事になるんですが、そこでやっと気づくんですね。
『料理は引き算』であるという事に。
マズくしないようにする!
料理って、『味つけ』って言いますよね。
だから『味をつけなくちゃ!』と勘違いしてしまうんですが、料理は『マズくならないようにする』事の方が大切なんです。
例えば『魚』の場合。
買ってきてそのまま焼いてもいいんですが、塩を振ってしばらくおいておく、『下処理』をする事で『生臭さ』を減らす事ができます。
『常温』に戻しておく事で、『生焼け』を防ぐことが出来ます。
『隠し包丁』で、味を染み込ませたり、火の通りをよくする事ができます。
美味しくするために調味料を足す事より、まずはマズくならないようにする事の方が大切なんです。
その後調味をするわけですが、それも『薄味』からスタート。
焼き魚なら、ほんの少し塩をふる程度。
一回の調理で味が決まるわけがありません。
何度も失敗を重ねていくうちに、『自分の好きな味』ができていくんです。
ダンスもそうかもしれませんね。
いきなり『僕はリズム感が無いから』と思うのではなく、『まずは歩く所から』始めてみては。
少し慣れたら『手を振ったり』『横に歩いたり』
少しずつ『味つけ』していくんです。
僕もそうやってきました。
料理もダンスも、初めはみんな素人です。
料理は『食べる事』、ダンスは『動く事』がスタートなんです。
美味しくなくても、上手じゃなくてもいいんです。
『初める』事が大切なんです。